祈りのうちに

夫の突然の脳腫瘍、物語を書きかえながら、すべてを受け入れる
日々をつづりたいと思います

失ってしまった自由

今日はようやくお風呂に入れました。

窓の外は雨だね

車で来るのですか?

と、夕方頃に夫からLINEがありました。


もう、何日も外の空気に触れていない夫が

気の毒です。


とてもきれいな病棟、ベッド回りも広々した

病院なのですが、簡単には外に出られない。

本人はせめて、ベッド、車椅子間の移動くらいは

フリーにしてほしいと嘆いています。


床頭台もロッカーも木製の優しさがあるし

4人部屋の洗面台もマンションのような仕様

お食事も美味しそうだし

窓側の夫はベッドの横が全面に大きな窓で

きれいな夕日も見られます。

今日はそこから小雨にけむる空が見える。

手術のあとこの部屋に入ったので

もうすぐ2ヶ月になります。


リハビリもウォームアップ的に始まったようだし、

まだ禁薬だけど、ずいぶん普通になり

夕食をいただきながらおしゃべりをしました。

会話の途中途中で、単語が出てこなくて

言葉につまります。


夫は自由を切望している。

帰っても自転車は無理だと言われた

自由に散歩したり、

自転車でおいしいラーメン屋さんまでも

いかれないんだね、と

悲しそうにつぶやく。


視野の狭さを毎日のように言いますが

視力をすべて失ってしまう人もいるよ、

狭くても見えることに感謝しなきゃね

と、励まし

ひらがなが多くて読みやすいと思われる

一冊の詩集をおいてきました。

私の好きな詩のページに栞をはさんで。


私は運転しながしながら何度か

意識が薄らぐ。

疲れているのだ、危ない。

それでも自分には自由がある。


小さな雨粒、細い雨が

私の心の中まで静かに響いていました。