祈りのうちに

夫の突然の脳腫瘍、物語を書きかえながら、すべてを受け入れる
日々をつづりたいと思います

感謝と祈りのうちに

膵臓がんの父の記録


父は苦しみから解放されました。

9月17日、夕刻

静かな日没の中で父は永眠しました。


この日の午前に家事を終えて

一息ついていた時に

携帯が鳴り、○○病院との表示に

胸の鼓動が早打ちになりました。


明け方からレベル低下になっているから

何時に来られますか?と聞かれました。

支度してすぐ行きますと答えて

妹に連絡したら、ちょうど長野にいる甥が

車でもうすぐ着くところと言うので

それぞれに車でむかいました。


母、私、妹、孫が4人

父のベッドを囲みました。

1人ずつ近づいて呼ぶと

大きく見開いた目がうなづきます。

誰が来たかわかるのでしょう

父は、1人1人をしっかり見ていました。


やがてお昼を過ぎ、

父の早い呼吸と誰もが父を見守る静寂な時間が

過ぎて行きました。


長男が近くのコンビニで

おにぎりやサンドイッチを買って来たので

妹と相談して家族室を借りることにしました。

家族室はダイニングキッチンと和室があります。

テレビも自由に見ることができました。

私たちには、日中は無料で使わせてもらえて

お泊りしたい希望があれば

有料で泊まれることになっていました。


病室にずっといれば

張りつめた空気で厳しくなるので

私たちは適度に家族室や病棟のデイルームを

利用しながら過ごし、夕方になりました。

妹が朝のうちにカレーをたくさん作って来たから

母と子供たちをいったん帰らせよう

私たちで、父に付き添うことを

考えようと話し

子供たちは1人ずつ父に近寄り

また来るねと言いました。


妹を残して取り急ぎ私と子供たちで

駐車場まで降りました。

エンジンをかけてすぐ携帯が鳴り

妹からすぐにきて!と言われて

私たちはすぐまた病室に引き返しました


病室に入るとすすり泣く妹がいました。

すぐそばであんなに努力呼吸をしていた父が

静かに眠っている

看護師さんが深々と頭を下げました。


父は永遠の眠りについてしまいました。


しばらくご家族でどうぞと

看護師さんは退室しました。

私たちは1時間くらい二度と目を開けない父のそばで

たくさんの感謝をし

頑張った父をねぎらい

それぞれに心の思いを父に向かって伝えました。


ほどなくして父の孫がもう1人きて

父は母と私たち2人姉妹と

孫5人の全員に看取られて

先に旅立って行ったのです。


ここのホスピスは霊安室に運ぶことなく

小さな優しい花束をナースが用意してくれて

お部屋から運ばれて

父は自宅に戻りました。

着衣は、いつもよくきていた

アーガイルのカーディガンと

気に入っていたリネンシャツと

入院したときに着てきたスボン


自宅のリビングの父がいつも座っていた

最後の頃は横になっていた場所に安置し

みんなで父のそばに集まりました。


もともと誰も呼ばずに

家族だけでささやかにおくることに

決めていたので、特別な形のお通夜もなく

家族が交代で見守りました。


私は横になっても眠れず

明け方近くに、思わず車に乗って

3年以上の月日を、父と向かった病院までの道を

走りました。


ほんの数時間前に荷物をまとめて出た病院のそばに

所属教会があります。

そこにしばらく車をとめて祈りました。

真っ暗な静寂しかありませんでした。


父はとうとう膵臓がんとの闘いを終えました。

眠っているその顔は

穏やかで優しい微笑みの顔

父は優しい仏様になりました。


ちなみに夫は

早めに契約だけしておいたショートステイに

いきました。


感謝と祈りのうちに