祈りのうちに

夫の突然の脳腫瘍、物語を書きかえながら、すべてを受け入れる
日々をつづりたいと思います

葡萄

秋が深まり
葡萄の季節も終わります。
夏にはおいしかった葡萄が
今はなんとなく食べたいと思えなくなりました。


寒くなって来たせいもあるのですが
お買い物に行って葡萄を見ると
さいごに父から所望されたものが
葡萄だったことを思い出してしまうのです。


ホスピスに移った9月6日午後
訪室すると、ほとんど食べ物を
受け入れられなくなった父が
葡萄が食べたいというので
すぐに近所のコンビニへ車を走らせました。
コンビニにはお野菜、果物が
おいてあるのですが
その時に葡萄はなくて
もう少し離れた場所のスーパーへ行きました。
いろいろな種類の葡萄があった
父が食べてくれるなら、と
高価なシャインマスカットや
ピオーネなど、何種類か買って
病室へ戻りました。
気持ち的には宮沢賢治が瀕死の妹に
一杯の雪を求めて出かけるような
そんな心情でしょうか


私が遅いから父は心配していました。
どれがいい?と数種類のぶどうを見せると
黒にしようか、と
2粒ほど食べた父
残りは冷蔵庫にしまいましたが
その後、1~2回ほど葡萄を口にして
ほとばしる果汁だけ味わうと
飲み込めずにティッシュに出していました。
それも2粒くらいでした。


私たちはふだん食べることが
難しいなんて思わないものです。
飲み込むことが難しいことだなんて
想像ができなかった
たとえば認知が進んで嚥下が難しくなるとは
聞いていますが
会話のできる人が、食べ物を飲み込めないことが
そんなことあるのだと、初めて知りました


来年も葡萄を見ると
父と過ごしたさいごを思い出すのでしょう



夫は今日からMRIでの精査入院です
午後から大学病院へ連れて行きます
この夏に大切な人とお別れしたばかりです
今はしばらくこんなエネルギーは
ありません


神さまどうか、夫の検査結果が
良好でありますように
私たちをお守りください


今日も祈りのうちに