祈りのうちに

夫の突然の脳腫瘍、物語を書きかえながら、すべてを受け入れる
日々をつづりたいと思います

晩秋散歩

穏やかな気候の午後

病院の売店でコーヒータイムしながら

2人で話をしました。


ベル麻痺は随分良くなり

ストローでしか飲めなかったのも

普通にできるようになったので

ホットコーヒーをいただきました。


夫は数ヶ月前に自分で作った

プログラムの資料を見たけど

理解ができないと嘆いていました。

頼まれたノートパソコンを

病室に持って行きましたが

自分で作ったエクセルのマクロが

よくわからないと言います。


脳の一部がなくなったからだと

悲しそうです。


コーヒーの後は、院外に出て

落ち葉の道を車椅子でお散歩しました。

銀杏はすこーし黄色を帯びてきて

もみじは一部赤く染まって来ていました。


散歩道にあるルルドのマリア様の前に

ベンチがあるので、そこでもしばらく

色々な話をしました。


その後、教会の聖堂に行き

静かな時間を過ごしました。

そのうちにシスターがオルガン練習にいらして

しばらく聴きながら沈黙の時間を

ともに過ごしました。


夕方、車での病院からの帰り道に

目の前に白く大きな丸い月が

のぼっていました。

木陰に隠れたりしながら

次第に夜のしじまの中で美しい輝きになりました。


私は1人、月の美しさを

静かに見ていました。

晩秋の見慣れた街並みが

今日もひとりの私を包む


たくさんのできごとが

頭の中で走馬灯のように

ぐるぐるとまわる


過去の嘘や裏切りなども

全てゆるし、受け入れ、恨みもなく

笑顔で病の人を支え続けることで

私の慈しみの聖年が

幕を閉じようとしています。


今日も祈りのうちに