祈りのうちに

夫の突然の脳腫瘍、物語を書きかえながら、すべてを受け入れる
日々をつづりたいと思います

もう一度ごめんなさい

(前回の続き)


さいごまで自宅で
介護することを選択できなかった私


在宅医の先生は、月曜日にケアマネさんと
相談するのでと穏やかな口調で言いました。
大学病院に入院するのが良いかと思いますと
言われました。


月曜日
デイサービスはお休みし、私も仕事を休み
朝のうちにケアマネさんから電話がありました。
再度、夫のこれからについての確認があり
私は今夫がどの段階にいるのか
わからないけれど
もし、月単位での時間なら
家族の面会もできるような緩和ケア病棟の
ある病院にゆくゆくは行きたいです
今は一般病院ではほぼ面会禁止なので
先のこと、必要なら考えたいけれど
大学病院での判断もあるから
いったんは入院させてほしいですと
答えました。
ケアマネさんはわかりました、MSWさんに
連絡しますと言ってくれて
すぐに折り返しがあり、入院の準備をして
これから受診するように言われました。


夫の歯磨き、身支度、荷物の準備
持参薬、いつも入院時に持って行った
小さなマリア像と天使、ロザリオ
次々にバッグに詰めて
汗が流れて来ました。


車、前回の予約外受診の時に
家の横の電柱に擦ったので
深呼吸して、落ち着いて、落ち着いてを
繰り返しながら発車
大学病院に向かいました。


まずは外来受診
いつもの主治医の曜日ではなかったので
違う女医さんの診察でしたが
「お久しぶりです」と声をかけられて
最初の入院の時に担当しましたと
いわれて、思い出しました。


2016年5月でした。


先生からいくつか質問された後
先生は夫に「入院しましょう」と
言いました。
夫は小さく頷いていました。


それからはPCR検査や
CT、レントゲン、血液などの
入院前一般検査があり
入院手続きをして、病棟へ
自動ドアが開くと、私はそこで
制御されて、夫だけあっという間に
病棟の中に消えて行きました。


これでしばらくもう会えないんだ


このあっという間の出来事に
初めて言いようもない不安感が襲って来ました。


面会ができないことを知っていたのに
こんな気持ちになるなんて
まるで姨捨山に弱い老人を捨てたかのように
私は幼いイエス様を置き去りにしてしまった



その日は担当医師からICはできずに
後日連絡ということで
夕方近く、ひとりで帰りました。


帰路、運転しながらずっと
こめんね、ごめんねをくりかえし
涙があふれました。


多くの反省もある
これでよかったのかという
胸の痛みもある


家に帰ると、夫の部屋のベッドが
抜け殻のように見えた


力のない私
弱い私
人のために働くことのできない私
こわがりの私に
責める心しか見つからなかった


今日も祈りのうちに